(質問のつづき)
低血圧も透析をしていない普段の日で上が80代、下が50代です。以前は上が150くらい有り降圧剤も飲んでいました。有る日を境に110→100→90→80と年々下がりだしました。こちらもホルモン検査などしましたが結局、分かりませんでした。
[回答]
●血圧低下(低血圧)になる方がいます
まず血圧低下(低血圧)について説明をいたします。
ご質問にあるように、透析をお受けになっている方の中に、もともとは高血圧だったのに次第に血圧が低下して、かえって低血圧の傾向になる方がいらっしゃいます。
透析が長期になると、低血圧になる方が増えてくることが経験されます。
●低血圧の原因について
低血圧の原因は、一つではないと考えられています。
主なものは、
(1)腎臓からの昇圧ホルモンが減ってくること
腎臓からはレニンというホルモンが出ています。
これが、アンジオテンシンというホルモンを刺激して血圧を上げる作用を持っています。
このレニンが、長期間の透析治療の間に出にくくなるために低血圧になってくることが想定をされています。
(2)自律神経障害
血圧は腎臓だけではなく、心臓や血管など、体の様々な部位の働きによって調節されています。
これらの中で、自律神経によっても血圧の調節がされているのですが、腎臓が悪くなると、(おそらく尿毒素の影響により)この自律神経の働きがうまくいかなくなり、血圧が低下することがあると考えられています。
(3)不適切なドライウェイト
ドライウェイトが本来の体重より下がりすぎていると、体が脱水になりますので、低血圧となります。
多くの場合、ドライウェイトがきついと透析の後半に血圧がさがり、上に書いたように脱水となりますので透析後もだるさや食欲低下などを来すようになります。
ところが、中には、こういった自覚症状がほとんどないのにドライウェイトがきつい(=透析後には本来よりも脱水となっている)方がいらっしゃることが知られています。
そして、注意が必要なのは、このようにドライウェイトを下げすぎているために低血圧になっている方が、私たち透析医が思っているよりも、かなり多いということです。
ホルモンの検査をお受けになった、とのことですが、アルドステロンというホルモンが高くなっていなかったでしょうか?
もし、このホルモンの値が高いようでしたら、ドライウェイトがきつい可能性がありますので、確認をしてみて下さい。
●低血圧の対策について
低血圧の対策ですが、上記の(1)または(2)であれば、昇圧剤(リズミック、ドプス、メトリジンなど)を使用するのが一般的です。
(3)が原因であれば、ドライウェイトを上げる必要があります。
心臓に負担をかけるといけませんので、ドライウェイトを上げる場合には、ゆっくりと、レントゲンや心エコーなどを確認しながら上げていきます。
●頭痛の原因について
次に頭痛ですが、これは難しいご質問です。
頭痛は、大きく分けて、頭(頭蓋)の中の血管に由来する頭痛(片頭痛が代表的です)と、頭の外の筋肉に由来する頭痛(緊張型頭痛と呼ばれています)とがあります。
しかし、頭痛の中には、この2つの分類のどちらにも分けられないものが少なくありません。
頭痛の専門外来を受診されているのですから、おそらく分類できない、つまり原因が不明の頭痛だと診断されているものと思われます。
透析をお受けになっている方の頭痛では、痛みが透析により変化するかどうかが重要です。
透析により頭痛が悪化する(痛みが強くなる)のであれば、透析治療が何らかの悪影響を及ぼしていることになります。
●ドライウェイトと頭痛
上の「低血圧の原因」の説明で、脱水(ドライウェイトがきつい)についてお話ししましたが、ドライウェイトがきついと頭痛がする方が時々いらっしゃいます。
もし、ドライウェイトを上げることによって、血圧が上昇し、頭痛が軽くなってくれれば、こんなにいいことはないのですが、前述のようにドライウェイトを上げていくことは、心臓に負担をかける可能性がありますので、主治医の先生とよく相談をしながら行ってみて下さい。
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