[回答]
血液透析治療で、残血対策はとても重要だということを ご理解いただきたいと思います。
治療が終了した後、血液がダイアライザーや回路に残ってしまうと、 それが元で貧血となるだけではありません。
治療中にダイアライザーに細かな目詰まりが生じているわけで、 せっかく透析をお受けになっても、毒素が十分に除去できていない 可能性も出てくるからです。
まず、残血がなぜ起こるかという理由をお話しましょう。
血液は血管の外に出ると固まろうとする性質を持っています。
これは、傷ができたときに血が止まらなかったら、大変なことになるのですから、 生物にとってとても大事な働きです。
けれども、透析治療ではちょっとじゃまになるのですね。
そこで、血液が固まらないようにヘパリン (または低分子ヘパリン)を使うのです。
それでも残血が出てしまうときの対処方法は2通りあります。
1つの方法は抗血小板剤というクスリ(アスピリンやパナルジンなど)を おのみいただく方法です。
血液が固まるのは、大きくわけて「凝固因子」という物質と 「血小板」という物質が働くからなのですが、ヘパリン(低分子ヘパリンも)は、 このうち凝固因子の働きをじゃまして血液を固まらないようにします。
血小板の働きは抑えられませんから、これによって残血が出てしまうことが あるのです。
こういった時に抗血小板薬を用いると、とてもきれいに血液が返ることを しばしば経験します。
2つめの方法は、ダイアライザーを変更することです。
ダイアライザーには様々な種類のものがありますが、その膜の性質や 患者さんの血液との「相性」の様なものによって、残血が出やすいものと 出にくいものとがあります。
ただし、残血が出なくなっても、今度は目的としている毒素の除去が 悪くなってしまってはいけませんので、ダイアライザーの選択は 総合的に行う必要があります。
主治医の先生や、臨床工学技士とよく相談してみてください。
最後に、これまで出なかった残血がなぜ出るようになるのか?と いうことも気になることと思いますが、これは難しい問題です。
たとえば、風邪などをひいて体調が悪くなると残血が出ることが よくあります。このようなときには、しばらく様子を 見てしまってもさしつかえありません。
ですが、こういったきっかけなしに、残血が出ることがあって 原因が追及しきれないことも時々経験します。
とにかく、上に述べましたように、残血対策をきちんと行っておくことが 長い透析ライフの上で、とても重要なことです。
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