[回答]
残っている腎臓のはたらきを「残存腎機能」といいます。
「残存腎機能」を、なるべく大切にしたい、というお気持ちは、 とても大切なことです。
残存腎機能を保つことは、オシッコの量を保つこととほぼ同じ意味と なります。
もちろん、腎臓のはたらきはオシッコを作るだけではなく、その中に たくさんの老廃物(尿毒素)を溶かして、体外に捨てることも 重要なのですが、実際にはオシッコの量を確保して、 水分制限を緩やかにし、透析での除水量を減らすことが 長い目で見た時には、とても重要となるのです。
すでに尿量が少なくなっていて、オシッコが一日500mLを 下回っているようでしたら、これからお話しすることは あまり役に立ちません。
残存腎機能が十分に残っていて、オシッコもたくさん出ている ということを前提に、次の3点を説明いたします。
1)体の水分量について
2)運動について
3)お薬について
1つめの「体の水分量について」についてです。
尿量を多く保つためには、体を脱水にしないことが大切です。
ですから、日ごろから十分な量の水分を摂ることが重要となります。
水分を摂りすぎて、透析での除水量が増えてしまうようでは、 かえって心臓などほかの臓器に負担をかけますので、逆効果です。
透析が中2日あいた週のはじめで、ドライウェイトの4%以内の 体重増加が目標ですから、これは超えないように気をつけてください。
そして、この体重増加の範囲内におさまっていれば、水分を たくさん摂ってほしいのです。
特に汗をかいたり、風邪などで熱が出た時、下痢をした時などは 脱水になりやすいので要注意です。
このような時には、お体が大変でも、体重をこまめに測って、 体重の増加が少なければ、水分を摂る、ということを 繰り返してほしいのです。
もちろん、体重が増えてきてしまったら、水分は制限をします。
2つめの「運動について」です。
運動は決して悪いことではありませんが、残存腎機能の保護という観点 からは、激しい運動はお勧めできません。
ウォーキング程度の、息が上がらないような運動にとどめて おいた方がいいですね。
安静にしすぎると、腎臓のはたらきは保つことができても 筋肉の力が弱ってしまったり、という弊害も出てきますから、 「適度な」運動はしておきたいと思います。
3つめの「お薬について」です。
これからお話しするお薬のお話しは、すべての方が飲んだ方が いいわけではありませんし、副作用もあります。
ですから、これらのクスリがご自分に好ましいものかどうかは 主治医の先生とよく相談されて、慎重に決定していく必要があります。
この点にはくれぐれもご注意してください。
まずは、利尿剤です。
オシッコの量をたくさん出すために、利尿剤の力を借りると うまくいくことがあります。
透析をお受けになっている方には、ラシックスという利尿剤が よく使われます。
利尿剤をのむことによってオシッコの量が増えるようでしたら、 続けていただきますし、のんでものまなくてもオシッコの量が かわらなければ、利尿剤はやめにします。
利尿剤はオシッコの量を増やすクスリですが、それ以外に 残存腎機能によいとされている薬に、ACEやARBと呼ばれている クスリがあります。
これらのクスリは、体の中のレニン-アンジオテンシン系という はたらきを抑えることによって、腎臓のはたらきを長く保たせる 作用を持っていることがわかってきています。
ACEもARBも血圧を下げるクスリ(降圧剤)です。
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